あの日、兄貴が灯した光

失明した弟の前に現れた異母兄。ひとりでは無理でも、そばで兄が見守っていてくれると頑張れる弟。それを見て自らの過去を省み、よき人間としての足跡を残そうとする兄。彼らの奮闘は、信頼こそが生きる糧であると訴える。

監督 クォン・スギョン

出演 チョ・ジョンソク/D.O./パク・シネ

ナンバー 56

批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

試合中の事故で失明した柔道選手の前に十数年ぶりに現れた異母兄。絶望の底でもがく弟を利用しようと近づくが、そのあまりの変わりように放っておけなくなる。物語はそんな兄弟が、お互いに唯一の家族であることを自覚し、2人で協力して人生の希望を取り戻そうとする姿を描く。ケチな詐欺師でしかない兄が得意の口八丁手八丁で世間に背を向けた弟の胸を開いていく過程は、幼いころの共通の記憶を掘り起こす作業でもある。愛してくれた両親はもういない、頼れるのは兄だけ。兄のほうも残りわずかな時間を弟のため使おうと決心する。ひとりでは無理でも、そばで兄が見守っていてくれると頑張れる弟。それを見て自らの過去を省み、よき人間としての足跡を残そうとする兄。彼らの奮闘は、信頼こそが生きる糧であると教えてくれる。

仮釈放されたドゥシクは実家に帰るが、目の不自由なドゥヨンの世話もせず遊び呆けてばかり。だが、母の思い出を語るうちにドゥシクが家出した理由を理解したドゥヨンは、ドゥシクを許そうとする。

かつて韓国代表だったドゥヨンは、元コーチのスヒョンからリオ・パラリンピック出場を勧められている。ドゥシクは己の余命が3ヶ月と診断されると、ドゥヨンを独り立ちさせるにはもう一度柔道で自信を回復させるしかないと、スヒョンに復帰の後押しを頼む。人をだますプロだったドゥシクがドゥヨンと暮らすうちに初めて覚えた、自分も役に立っているという感覚。それはドゥヨンへの兄弟愛以上に、弟が誇れるような兄になりたい意思の表れなのだ。このあたり、いかにも韓国人らしい熱く濃い感情が交差する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてパラリンピック出場権を得たドゥヨンは、ドゥシクの病状に気づかぬままリオに旅立つ。両親の死後、柔道に打ち込むしかなかったドゥヨンは、晴眼時には得られなかった“支えられている”感触と“期待に応える”決意に本来の実力を発揮する。誰かの思いを背負って戦う、それが人を強くするとこの作品は訴えていた。

オススメ度 ★★★