改めて、戦争責任とは何かを問い返しております。

Fbより転載

改めて、戦争責任とは何かを問い返しております。

泥 憲和

【悲劇はこうして起こされた】

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◆カリスマ的リーダーの自覚

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安倍総理防衛大学校卒業訓示がまるで『軍人勅諭』だと話題になっています。

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「私と自衛隊が直結することがわが国の安全に寄与する」

「警戒監視や情報収集にあたる部隊は私の目と耳である」

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 隊員にこういえば士気が上がると総理は考えたのでしょう。

 自分は自衛隊のカリスマ的存在だと信じているのです。

 ただの勘違いだと思いますけどね。

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 だって、国会でちょっと都合の悪い質問をされたらブチ切れてしまい、アワアワと文章にもならない答弁をする姿を誰もが見てますから。

 あの調子で指揮官ヅラされたのではかなわないと、武官なら誰でも思うんじゃないでしょうか。

 指揮官は感情に流されてはならないからです。

 まさか安倍総理、作戦のいちいちに口出しをするつもりではないでしょうね。

 そんなことになったら悲劇です!

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昭和天皇の口出し

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 口出しと言えば、昭和天皇にこんなエピソードがあります。

 1943年です。

 4月に山本五十六が戦死し、5月にアッツ島の守備隊が玉砕しました。

 このとき、昭和天皇が蓮沼侍従武官長にこう語ったそうです。

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《こんな戦をしては「ガダルカナル」同様敵の志気を昂げ、中立、第三国は動揺して支那は調子に乗り、大東亜圏内の諸国に及ぼす影響は甚大である。何とかして何所かの正面で米軍を叩きつけることは出来ぬか》(防衛庁監修『戦史叢書 大本営陸軍部〈6〉』)

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 「お言葉」は軍部に伝えられました。

 8月になって、杉山参謀長が天皇の求めに応えられない旨を率直に上奏します。

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(『杉山メモ』より)

御上 いずれの方面も良くない。米軍をピシャリと叩くことは出来ないのか。

杉山 両方面とも時間の問題ではないかと考えます。第一線としてはあらゆる手段を尽くしていますが誠に恐縮に堪えません。

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 打つ手がないというのです。

 けれども昭和天皇は参謀長の言葉を理解できなかったのか、それとも理解したけれど納得できなかったのか、こんな返答を返します。

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御上 それはそうとして、そうじりじり押されては敵だけではない、第三国に与える影響も大きい。一体何処でしっかりやるのか。今までの様にじりじり押されることを繰り返していることは出来ないのではないか。

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◆退路のない戦いの悲劇

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 この言葉が悲劇の始まりでした。

 一度ぐらい米軍をピシャリと叩きつけなければならないことになりました。

 それをしないと、戦いを止められなくなったのです。

 講和を申し入れる道が閉ざされてしまったのです。

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 しかし米軍に勝てる戦力などありません。

 戦場の将兵は、武器もなく、食糧もなく、戦う手段が何もありません。

 それでも戦えというのだから、戦いを終わらせるには全員が死ぬしかありません。

 飢えて目玉だけをぎょろつかせた兵隊の群れが、敵の機関銃弾の中に無意味に飛び込んでいく自殺攻撃が繰り返されることとなりました。

 おびただしい出血が強制されました。

 1943年から敗戦まで、幾十万人の将兵が無駄に殺されていったでしょうか。

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「米軍をピシャリと叩くことは出来ないのか」

「今までの様にじりじり押されることを繰り返していることは出来ないのではないか」

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 昭和天皇は軍事教育を受けた人でした。

 口にしてはならない言葉はわきまえていたでしょう。

 しかし負け戦のストレスの中、つい「素の人間」に戻ってしまい、言ってはならない言葉を吐いてしまった。

 カリスマリーダーのこのひと言が、全軍を呪縛し、世界史上にも類のない悲劇的戦闘が繰り返されたのでした。

 リーダーの言葉は、これほどに重い。

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 さて保守論壇などは、安倍総理をカリスマリーダーに仕立てたくて画策を続けています。

 幸いなことに、主に本人の資質のせいで、安倍総理はいまだカリスマに到達しておりません。そこまで信頼されてはいない。

 これでよかったとつくづく思います。

 悲劇を防ぎたいなら、カリスマに上り詰める前に、引きずりおろしましょう。