三遊亭円歌師匠、おおらかな時代の大スター

三遊亭円歌師匠が亡くなった。十八番「中沢家の人々」を初めて聞いた円朝祭の高座は忘れられない。円朝祭ではレギュラーだったから何度となく聞いたけど、何回聞いても爆笑だった。

「中沢家の人々」は実体験に基づく随談。自分を勘当した両親がなぜか自分の家にいて、結婚したら妻の両親も同居、妻が若くして亡くなっても両親は健在で引き続き同居。再婚した後妻の両親も同居、都合6人の老人と同居する話しだ。今は老人差別で放送できない部分もあるだろう。

「月給日」は、銀行振込がない時代のサラリーマンが、妻にバレないように給料から小遣いをくすねる話し。会社の総務部も友好費天引きなどと明細を細工してくれる。今は女性蔑視で放送できない部分もあるだろう。

一世を風靡した名作「授業中」は、田舎の小学校を舞台に新任教師と生徒のやり取りを描いた。カール・ブッセの詩「山のあなた」を音読させるのだが、どもりの子がうまく読めず、山のあなあなあなあな…、となってしまう。

実際のクライマックスは浪曲にかぶれた子が広沢虎造気取りで♪山のあなた〜の空〜ぁ遠くぅ幸住むと人のいふ〜ぅ、と唸り、先生からもやんやの喝采を得る場面。

今は障がい者差別になるので放送できない。

笑いは差別であるを地で行く一方、常に自虐ネタでもあった。今より笑いに寛容で、おおらかな時代の名人だった。いや名人というより大スターだった。

訃報では落語協会の重鎮として信頼を集めたとも書かれ、たしかにそうなんだけど、名古屋の大須で苦労した三遊亭歌笑が東京に復帰する際には厳しい態度だったらしい。

頑固でなければ大看板は務まらない。

合掌。