猛爆11点

5月13日(土) マツダスタジアム

読売|000|200|000| 2

広島|301|001|06X|11

今シーズン初の訪広は、カープの圧勝だった。

この日、私は、前日から入れ込んでいた。およそ半年ぶりとなる、広島の友人たちとの再会。歴史的な逆転負けをきっかけに、投打の歯車がかみ合わなくなり、首位から転落したカープの応援。その二つが、私を前夜から落ち着かなくさせていた。

・・・勝たねばならぬ。

一ファンが、そのようなことを考えたとて、どうなるものでもない。しかし、私はこれまで、露ほども疑ったことはない。我々ファンの応援、その一声一声が、選手たちの士気を鼓舞し、力を与えるのだということを。野球の試合における、応援の力。それを私は、この半世紀、つぶさに見てきた。自分の歌う応援歌、自分の叫ぶ声援が、そうした一声になって、プラスアルファの力をカープにもたらすことを、私は信じていた。

このカードを負け越せば、3カード連続負け越しである。そして、その後に控えるのは、今シーズン対戦成績で負け越している、DeNAとの3連戦。一つ間違えば、カープは浮上のきっかけを失うかも知れない。この対読売3連戦は、絶対に負けられない戦いだった。

既に前日の雨で、第一戦は中止になっていた。残る2試合を二つとも勝利しなければ、このカードを勝ち越すことはできない。首位を快走する阪神に離されないためにも、カープは浮上のきっかけを掴まなければならないのだ。

応援もさることながら、私は、自分の持っている「運」も、カープのために役立つのではないかと考えていた。

過去3年間、私がマツダスタジアムに於いて応援した11試合で、カープは負けたことがない。野球には、時として不思議な力が働く。これもまた、私が長い観戦経験から得たジンクスである。

「運」がなくなる時は、いずれ来る。だが、それは今回ではない。そう信じて、私は新幹線に乗ったのだった。

東京のぐずついた天気が嘘のように、広島は爽やかな快晴だった。迎えに来て下さった、友達のあっくんさんの愛車に乗せていただき、この日の宿であるホテルフレックスで荷物を預けると、私たちは昵懇(じっこん)にしている南区の瀬戸寿司へと向かった。

ご亭主の握って下さった美味しい寿司を食べながら、あっくんさん、常連のH氏、S氏、そしてあっくんさんの母上のご友人方と語らった、約2時間。美味しい寿司に会話も弾み、ご亭主の運転する車でマツダスタジアムに到着したのは、試合開始の約10分前だった。

正門前で、もう一人の友達・Xa@がんばれカープさんが、待っていてくれた。挨拶を交わして持参したお土産を手渡し、私たち3人は、賑々(にぎにぎ)しく球場に入った。

・・・また、ここへ来ることができた。

スタンドを埋め尽くした赤いユニフォームを見渡して、私は大きく息を吸い込んだ。カープを愛し、球場へ足を運ぶ人たちが、こんなにもいる。3万余の「仲間」たちと、今日はカープのために全力で戦おう。気合いを入れ直し、私は「21」のユニフォームに袖を通した。

試合は、カープ・岡田、読売・マイコラスの両先発で始まった。

前回の登板の際、9点差をひっくり返された岡田は、もちろん心中に期するものがあるだろうが、緊張してもいるだろう。その緊張をほぐし、リラックスさせることが、我々ファンの役目である。私は初回から、あっくんさんたちの陣取っているカープパフォーマンスと声を合わせて、全力で応援した。

1回表を三者凡退と、岡田は見事な立ち上がりを見せた。そしてその裏、打線が強烈な援護射撃をマイコラスに浴びせ、この日の猛攻の幕を開けた。

田中、菊池が連打でチャンスを作り、一死後、鈴木がセンター前へタイムリー。二死後、エルドレッドが四球を選び、満塁とすると、この日復帰したばかりの松山が、きっちりとセンター返しで2点タイムリー。この回、5本のヒットを集中し、あっという間にカープが3点を先制した。

この3点は、私たちファンにとって、強力なカンフル剤となった。

甲子園での、悪夢のような3連敗。その悪夢が、この日も再現されるのではないかと、誰しもが危惧を抱いていたはずだ。一体、何点取れば勝てるのか。いや、それより何より、今回は点が取れるのか。そんな不安を、誰もが払拭しきれない。

そうした嫌な雰囲気が、この3点で和らいだ。

少なくとも、打線は好調だ。ならば、岡田さえしっかりすれば、勝てるではないか。私は、できる限りの大声で、マウンドに立つ岡田を応援し続けた。

私たちの声援は、少なからず彼の力になったはずだと、私は思う。岡田は、3回まで被安打1と、安定したピッチングを見せた。

この好投に応えたのが、エルドレッドである。3回裏、先頭打者としてバッターボックスに入った彼は、マイコラスの投じたボールを、ピンポン玉のように左中間スタンド最上段へと打ち込んだ。

4−0。

今日は、行ける。この日3度目の「宮島さん」を歌い、周囲の人たちとカンフーバットを打ち鳴らしながら、私は思った。

だが、一週間前の悪夢を思い起こさせるような場面が、その直後に待っていた。

阿部の、ツーランホームランである。

打った瞬間に、それとわかるホームランだった。沸き立つビジターパフォーマンスを、私は茫然と見上げた。一瞬にしてリードは2点になり、球場全体が緊迫に包まれた。

・・・もしや・・・いや、そんなはずはない。

もやもやとわだかまる危惧を、私は懸命に打ち消した。盛り上がっていた周囲の人たちも、一様に黙り込み、声の出ているのはカープパフォーマンスだけといった、不気味な一瞬があった。

ホームランというのは、実に恐ろしいものだ。わずか一振りで、球場の雰囲気を一変させてしまう。この一発で、甲子園の悪夢が蘇(よみがえ)り、4回・5回とカープ打線が凡退すると、外野席の応援は精彩を欠くようになってきた。

しかし、この日の岡田は踏ん張った。ランナーを出しながらも、ストレートを主体にして、ぐいぐいと攻めた。5回、6回。読売の攻撃をしのぎ、4−2のまま、試合は膠着状態になったかに見えた。

スコアが動いたのは、6回裏だった。

この回、先頭の松山がツーベースで出ると、緒方監督は早めの勝負に出た。野間を、代走に送ったのである。

そして、追加点をお膳立てしたのは、何と岡田だった。

野手顔負けの鋭い打球で、ライト前ヒット。これでランナーが3塁に進んだ。この日初めてのチャンステーマが演奏され、私たちは声を嗄らして歌った。とにかく、あと1点。何とか、あと1点欲しい。誰の顔にも、そう書いてあった。

スタンドの期待に応えたのは、田中だった。打球は、少し浅いライトフライだったが、3塁ランナーの野間は、猛然と本塁に突っ込んだ。ライトからの送球がストライクだったら、タイミングはかなり微妙なものになっていただろう。しかし、橋本到の送球は、大きく左に逸れた。カープに貴重な5点目が入り、私たちは歓声を上げて「宮島さん」を歌った。

7回表、岡田がピンチをしのぐと、カープは逃げ切りに入った。8回表をジャクソンが三者凡退に締めると、私たちはカープの勝利を確信した。

ところが、この日のカープは、さらなるプレゼントを、私たちに用意してくれていた。

8回裏である。

この回から登板した篠原に、カープ打線は猛然と襲い掛かった。

二死後、田中が四球を選び、すかさず盗塁。続く菊池も四球を選ぶと、読売はたまらず、中川をリリーフに送った。だが、丸は動じることなく、セオリー通りのセンター返し。カープは、ダメ押しの1点を追加した。

この時に沸き起こった大歓声は、マウンドに孤立した中川に、雷撃のような衝撃を与えたに違いない。他チームのピッチャーが口を揃えて、「マツダのマウンドでファンの歓声を聞くとビビる」というほど威力のある大歓声である。若い中川は、心底震え上がったことだろう。

続く鈴木は、労せずして四球で歩き、二死満塁。ここで安部が、レフトへ見事な流し打ちの2点タイムリーを放つと、仕上げはエルドレッドである。快音を残して弾き返された打球は、弾丸の如きライナーで、バックスクリーン左へ飛び込んだ。読売の息の根を止める、スリーランホームランだった。

11−2。

もはや読売には、闘志は残っていなかった。9回裏、マウンドに上がった一岡の前に、3人で抑え込まれ、カープは読売に圧勝した。

周囲の人たちと最後の「宮島さん」を歌い、お疲れさまの言葉を交わすと、私はコンコースで、あっくんさん、Xa@がんばれカープさんと合流し、喜びを分かち合った。この日のゲームのことを楽しくおしゃべりしながら、徒歩で流川へと歩いたひとときの楽しさ。祝勝会の会場である「居酒屋DINING 海月 本店」で、もう一人の友達・ぐんそうさんと合流し、私たちは高らかに、勝利の杯を挙げた。

実に楽しい、愉快な宴だった。この日のゲームのこと、今シーズンのカープのこと。話題は尽きず、食べ放題の時間いっぱいまで、会話は盛り上がった。たかが1勝、されど1勝。こうした一つ一つの勝利の積み重ねが、カープと共に歩む優勝への道のりなのだ。その一つに参加することができた、というささやかな喜びに浸りつつ、私は、あっくんさん、Xa@がんばれカープさんに送っていただいて、ホテルへ歩いた。

この場を借りて、お世話になった方々に、お礼を申し上げたい。

駅まで迎えに来て下さり、貴重なお土産を下さった、あっくんさん。

祝勝会の会場を手配して下さり、お土産も持参して下さった、Xa@がんばれカープさん。

お仕事を終えた後、お土産まで持って駆けつけて下さった、ぐんそうさん。

いつもながら、温かく迎えて下さった、瀬戸寿司のご亭主ご夫妻。

楽しい語らって下さった、奥様のご友人方。そして、常連のH氏、S氏。

6回にご挨拶に来て下さり、ご自身の撮影された選手の写真に、私の名前入りのサインまで貰って下さった、最高のプレゼントを持参して下さった、友達の☆しゅん(春)☆さん。

皆さん、本当に有難うございました。

皆さんのご厚意で、今年最初の訪広は、実に楽しく、思い出深いものになりました。皆さんとの交流が、これからも変わらずに続くことを、私は心から願っています。これからも、よろしくお付き合いのほど、お願いいたします。

首位を阪神に譲ったものの、2位という好位置に付けている、我らがカープ

ファンとしては、良く頑張ってくれていると思うが、今シーズンの我々の目標は、「優勝」ではなく「日本一」である。まだまだ、2位で喜んでいるわけにはいかない。選手たちにも、もっと上を見て、闘志を燃え立たせて欲しい。

30日から、交流戦が始まる。セ・リーグのチームにとっては、優勝のカギを握る、厳しい3週間である。前半戦最大の山場を、どう乗り切るか。カープにとっても、ファンにとっても、ここが最初の正念場である。

信じて、応援あるのみ。

長い戦いの果てに栄光の瞬間が待っていることを信じて、私たちは私たちのすべきことをしよう。

他チームの投手たちが、「マツダのマウンドでファンの歓声を聞くとビビる」と言うほど威力のある、私たちの応援。それこそが、カープの選手たちにとって最大の援軍である。

5月26日。私は、東京ドームへ駆けつける。カープを強力にサポートする、数多くのファンたちの一員として、優勝のための勝利の何分の一かを読売からもぎ取るため、全力を挙げて応援してくるつもりである。

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